「最近、肩が痛くて腕が上がらない。年齢のせいかな…」そう思っていませんか?
実はその症状、腱板(けんばん)断裂のサインかもしれません。放っておくと、肩がより動かしづらくなったり、手術が必要になることもあります。
この記事では、肩の痛みの原因となる腱板断裂について、原因・症状・見分け方を整形外科医がやさしく解説。
早期発見で、つらい痛みや手術を防ぎましょう!
腱板断裂とは?原因と症状をチェック

腱板(けんばん)とは、肩の動きをなめらかにし、安定させる重要な組織です。
年齢を重ねると、この腱板が傷ついたり、切れてしまうことがあります。これを「腱板断裂」と呼びます。
放置すると肩が動かしづらくなったり、痛みで日常生活に支障が出たりすることも。
この章では、腱板断裂の基本的な知識として、以下の3つのポイントを解説します。
- 腱板の役割と断裂のメカニズム
- 腱板断裂が起こりやすい人の特徴
- 五十肩との違いは?見分け方のポイント
肩の痛みの原因が何かを自分で判断するヒントが得られ、早期受診や予防に役立ちます。
腱板の役割と断裂のメカニズム
腱板とは、肩関節を取り囲む4つのインナーマッスル(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)のことで、肩の動きと安定性を保つ役目があります。
40代以降になると腱が弱くなり、転倒やスポーツ、日常動作の繰り返しなどが引き金となって断裂を起こします。
特に棘上筋(きょくじょうきん)が断裂しやすいことで有名です。
ある調査によると、60代では約30%以上の人が腱板断裂を起こしているという報告もあります。
腱板断裂が起こりやすい人の特徴
加齢による腱の劣化に加えて、肩を多く使う仕事や趣味(テニス・ゴルフ・重量物の持ち運びなど)が腱板にストレスをかけ、断裂のきっかけになります。
日本整形外科学会の情報によると、肩に負担のかかる職種やスポーツ歴がある方に腱板断裂が多く見られるとのことです。
五十肩との違いは?見分け方のポイント
腱板断裂と五十肩(肩関節周囲炎)には、どちらも「肩が上がらない」「痛い」などの症状がありますが、原因や治療法が異なります。
- 五十肩:関節包という肩の袋が縮んで動かしにくくなる病気で、自然に治ることもある
- 腱板断裂:筋肉の腱が切れており、放置しても自然には治らない
似て非なる二つの疾患。正確な診断には医師のチェックが必要です。
腱板断裂を放置するとどうなる?

腱板断裂を「そのうち治るだろう」と思って放っておくと、思わぬリスクを招くことがあります。自然治癒は期待できず、放置するほどに症状が進行し、回復にも時間がかかるようになります。
この章では、腱板断裂を放置した場合に起こり得るトラブルや、放置によって手術が難しくなるケースなどを解説します。
- 自然治癒するのか?専門医の見解
- 断裂の進行で起こるリスク(肩の拘縮・機能障害など)
- 放置で手術が難しくなるケースも
自然治癒するのか?専門医の見解
「腱板断裂は自然には治らない」というのが専門医の見解です。
腱板は一度断裂すると、自分の力で元に戻ることはありません。これは血流が少ない構造と、肩の動きによって絶えず引っ張られるため、自然治癒が起きにくいからです。
実際、痛みが軽減してきたと思っても、それは肩の動きをかばって使わなくなった結果で、断裂そのものは治っていないことが多いです。
腱板断裂は自然には治りません。早めの対処が重要です。
断裂の進行で起こるリスク(肩の拘縮・機能障害など)
断裂を放置すると、腱板の損傷がさらに広がり、周囲の筋肉が萎縮(いしゅく)します。
さらに痛みや動かしにくさをかばうことで、肩関節が拘縮(こうしゅく=固まること)を起こしやすくなります。
実際に断裂から時間が経つと、筋萎縮や脂肪変性が進み、治療成績が悪化すると報告されています。
放置で手術が難しくなるケースも
腱板断裂を放置すると、いざ手術となったときに成功しにくくなります。
なぜなら断裂の範囲が時間とともに大きくなり、筋肉が縮み脂肪に置き換わることで、手術で縫い合わせるのが困難になるからです。
自分でできる腱板断裂セルフチェック方法

「病院に行くほどじゃないけど、ちょっと肩がおかしいかも…」と感じることありませんか?
実は腱板断裂は、いくつかのセルフチェックで早期に気づける可能性があります。
この章では、誰でも自宅で簡単にできるチェック方法を紹介し、受診の判断材料をお届けします。
リフトオフテストやドロップアームテストとは?
リフトオフテストとドロップアームテストは腱板断裂を見つける代表的な方法です。
これらのテストは医療機関でよく使われる評価方法ですが、簡単な形で自分でも試すことができます。
リフトオフテストは肩甲下筋(けんこうかきん)の断裂を確認する方法です。背中に手を回し、その手を背中から離せるかを確認します。離せなければ断裂の可能性があります。
ドロップアームテストは棘上筋(きょくじょうきん)を中心とした断裂を調べます。腕を横から90度まで上げて保ちます。途中で腕が落ちたり、痛みで保てない場合は要注意です。
整形外科医の間でもよく使われており、特にドロップアームテストは信頼性が高いとされています。
テストは簡単。うまくできない動作があるなら、一度専門医に相談を。
どんな動きができないと要注意?
腕を上げる・ひねるなどの基本動作ができないと腱板断裂の可能性があります。
たとえば、以下の動作で違和感がある方は注意してください。
- 夜間、寝返り時に肩がうずく
- 腕を真横や前にスムーズに上げられない
- 物を持ち上げるときに肩がズキッと痛む
- 背中に手を回すのが困難(ブラホックに手が届かないなど)
これらの症状は、腱板がうまく機能していないサインで、筋力低下や可動域制限が進行している可能性があります。
動作の「できない」や「痛い」は身体からの大切なサイン。早めの判断が回復のカギです。
腱板断裂の検査方法|MRI・エコーの違いと選び方

肩の痛みや動かしづらさがあるとき、正確な診断に欠かせないのが画像検査です。
特に腱板断裂では、MRIとエコー検査が主な手段となります。
この章では、それぞれの検査の特徴や違い、当院での検査体制についてくわしく紹介します。
MRI検査のメリットとデメリット
MRI検査は、腱板の断裂の程度や断裂部位、筋肉の萎縮・脂肪変性などを詳細に評価できます。
断裂の程度を知るには非常に有効で、手術の判断材料としても必須の検査です。
ただしデメリットとしては、検査時間が20〜30分と長く、狭い空間での撮影が不安な方にはストレスとなることがあります。また、費用もやや高め(3割負担で5,000〜7,000円程度)です。
エコー検査でもわかる?その精度とは
エコー(超音波)検査は、リアルタイムで肩の動きを見ながら腱の断裂や損傷を確認できる方法です。
特に外来での初期診断や、部分断裂・炎症の確認に有効です。
メリットとしては、すぐに検査可能なこと、放射線を使わず安全で、検査も5〜10分と短時間で終了。費用も安価(3割負担で約1,000円〜1,500円程度)です。
実際、当院のエコー検査機器は最上位機種を採用しており、精度の高い診断ができます。
このように初期診断や身体への負担が少ない検査には、エコー検査がとても役立ちます。
当院での検査体制と所要時間の目安
当院「あおき整形リハビリクリニック」では、エコー検査に対応しています。その後、必要に応じて提携医療機関でのMRI検査を案内しています。
エコー検査は診察当日すぐに実施可能で、所要時間は5分程度。結果はその場でご説明します。
このように当院では、検査から治療方針の決定までスムーズに進める体制を整えています。
腱板断裂の治療法|注射・リハビリ・手術の選択肢

腱板断裂と診断されたとき、「すぐに手術が必要なの?」と不安になる方も多いでしょう。実際には、症状や年齢、生活スタイルに応じてさまざまな治療法があります。
この章では、注射や保存療法(リハビリ)、そして手術治療それぞれの特徴と適応について解説します。
治療法の選択に悩んでいる方も、この章を読むことで自分に合った治療が見つかるきっかけになるはずです。
注射で改善するケースとは?
軽度の腱板断裂では、炎症を抑える注射で痛みの改善が期待できます。
なぜなら肩の痛みの主な原因は、断裂そのものよりも、腱板周囲の炎症によることが多いためです。
たとえば部分断裂と診断された50代女性が、週1回のステロイド注射とリハビリを併用したところ、約2か月で痛みが大幅に軽減し、日常生活を問題なく送れるようになりました。
ただし、注射は根本治療ではありません。くり返し使いすぎると腱の劣化を招く可能性もあるため、使用には医師の管理が不可欠です。
注射は痛みのコントロールに効果的ですが、慎重に使うことが大切です。
保存療法(リハビリ)の有効性
リハビリは肩の可動域を改善し、残存する筋力を強化して日常生活に支障をきたさない状態をめざす保存的治療です。
軽度〜中等度の腱板断裂であれば、リハビリによって機能回復が期待できます。
継続的なリハビリは、手術を回避するための有力な選択肢です。
どんなときに手術が必要?目安となる基準
手術の主な適応は、以下のとおりです。
- リハビリや注射で効果がない
- 完全断裂で肩の機能が著しく低下している
- スポーツ復帰や仕事への早期復帰が必要な場合
- 若年〜中年層で筋力低下や日常生活の支障が大きい
なお、手術には入院と術後リハビリが必要となるため、本人のライフスタイルも考慮したうえで判断することが大切です。
手術は回復の手段の一つ。タイミングと目的に応じた選択が重要です。
腱板断裂の手術後のリハビリと回復プロセス

腱板断裂の手術を受けたあとは、リハビリが回復のカギを握ります。
ただし「どれくらいで治るのか?」「どんなリハビリをするのか?」など、不安や疑問を持たれる方は少なくありません。
この章では、術後リハビリの流れや注意点、回復までの期間などをわかりやすく紹介します。
手術後にどんな過ごし方をすれば良いのか、イメージできるようになりますよ。
術後すぐに始めるリハビリの重要性
手術によって腱が修復されても、使わなければ筋肉はすぐに弱ってしまいます。そこで重要なのが段階的なリハビリです。
術後はすぐに負荷をかけることはできませんが、関節の拘縮(かたくなること)を防ぐための他動運動(理学療法士が行う他人の手による運動)を早期に始めることが推奨されています。
早期のリハビリは、再断裂の予防と機能回復の要となります。
回復までの期間とリスク管理
腱板手術後の回復には3〜6か月以上かかるのが一般的です。
症例によりますが、たとえば以下のようなスケジュールで進みます。
- 術後〜6週:肩を固定し、他動運動で可動域を維持
- 6〜12週:軽い自動運動(自分で動かす運動)を開始
- 3〜6ヶ月:筋力トレーニングを含む本格的なリハビリ
- 6ヶ月以降:スポーツや重労働などへの段階的な復帰
残念ながら術後の固定期間中に患者さまが無理に動かしてしまい、再断裂を起こすというケースもあります。リハビリの内容・強度・タイミングは、必ず専門家の指示に従いましょう。
腱板断裂の術後は長期戦。焦らず、着実にリハビリを続けることが成功のカギです。
腱板断裂は早期受診がカギ|岡山市での整形外科選び

腱板断裂は、放置すればするほど治療が難しくなる疾患です。早めの受診が、回復の近道になります。
ですが、「どこで診てもらえばいい?」「どんな整形外科を選ぶといいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この章では、整形外科を選ぶときのポイントと、当院「あおき整形リハビリクリニック」の特長をご紹介します。
整形外科選びのポイント
腱板断裂は、MRIやエコーなどの画像検査と、専門的なリハビリの両立が不可欠な疾患です。そのため、次のようなポイントを満たすクリニックを選ぶと安心です。
- 肩関節疾患の診療実績が豊富
- 他医療機関との連携がスムーズ
- 手術前後のリハビリ体制が充実
- エコーやMRIなどの画像診断に対応
当院「あおき整形リハビリクリニック」の強みと実績
岡山市北区久米にある当院「あおき整形リハビリクリニック」では、腱板断裂の診療において、以下の強みを持っています。
- スポーツ整形の視点も取り入れ、若年層の復帰支援も実施
- 理学療法士が常駐し、診察と連携して的確なリハビリを提供
- 患者さま一人ひとりに合わせた保存療法や術後リハビリ計画を立案
- エコーによる即時診断が可能。必要に応じて提携病院でのMRI紹介もスムーズ
初診から治療計画・リハビリ・再評価までを同じ施設内で完結できる体制を整えているため、患者さまの通院負担も少なく、治療に集中できます。

腱板断裂に関してよくある質問

この章では、整形外科外来で頻繁に聞かれる2つの質問にわかりやすくお答えします。
疑問を解消することで、早期受診や治療の第一歩につながるはずです。
腱板断裂は自然に治りますか?
残念ながら、腱板断裂は基本的に自然治癒しません。
なぜなら腱板は血流の少ない部位で、いったん切れてしまうと自己修復が難しいためです。また、日常生活で肩を動かすことが多く、断裂部が休まらないことも自然治癒を妨げる要因です。
腱板断裂は自然には治らないからこそ、「痛みが引いた=治った」とは限りません。違和感がある場合は、なるべく早めに専門医の診察を受けることが大切です。
腱板断裂の検査は痛いですか?
腱板断裂の検査には、主にエコーやMRIが使われます。
いずれも非侵襲的で、針を刺すなどの処置は行わないため、痛みを感じることはありません
検査は想像よりもずっと簡単で痛みもありません。不安な方も、ぜひお気軽にご相談くださいね。
まとめ:腱板断裂を放置せず早期発見・治療を

腱板断裂は早期に気づき、適切な治療を始めることで、手術を回避したり、回復を早めたりすることが可能な疾患です。
しかし放置してしまうと、肩が動かなくなったり、将来的に手術が難しくなることもあります。
そのため肩に違和感がある方や、過去に五十肩と言われたけれど治りにくいと感じている方は、一度専門医の診察を受けてみることをオススメします。
岡山市にある当院「あおき整形リハビリクリニック」では、地域のさまが安心して相談できるよう、丁寧な診察・検査・リハビリ体制を整えています。
肩に不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ。
