医療コラム

「糖質制限=即ダイエット成功」はウソ?医師が明かす意外な落とし穴とは

「糖質制限すれば、すぐに痩せられる!」そんな言葉に飛びついていませんか?

一見よさそうな糖質制限ですが、実は心と身体に思わぬ落とし穴があるんです。

その理由と正しいダイエットのコツを、現役の整形外科医がわかりやすく解説していきます。

糖質制限とは?基本的な考え方をおさらい

糖質制限とは名前のとおり、ごはんやパンなどに含まれる糖質(炭水化物)を減らす食事法のことです。

急激に体重が落ちることもありますが、身体のしくみを無視して制限すると、健康を損なうことがあります。

この章ではまず、糖質のはたらきと糖質制限が流行した背景を確認しましょう。

糖質の役割とは

脳なんて、1日に使うエネルギーの約60%以上を糖質に頼っているといわれているんですよ!

だからたとえば、朝食におにぎりを食べると、元気が出て頭もスッキリしますよね。それは糖質がスムーズに脳へ送られ、集中力や記憶力が高まるからです。

このように糖質は、毎日を元気に過ごすためのガソリンのような存在といえます。

糖質制限が注目された背景

糖質制限は、すぐに体重が落ちるとして一気に広まりました。

たしかに糖質を減らすと、体内の水分が抜けて体重が早く落ちることがあります。

話題性だけで飛びつくのではなく、その本質をしっかり理解することが大切です。

糖質制限のデメリット1:脂肪を溜めこみやすくなる体質へ

「糖質を減らせば痩せる」と信じていませんか?

実はやみくもな糖質制限は、逆に脂肪を溜めこみやすい体質をつくってしまうことがあるんです。

この章では、朝食を抜いたときのインスリンの働きと、リバウンドのしくみについて解説します。

朝食抜きとインスリンの関係

その理由は、インスリンというホルモンの働きにあります。インスリンは血糖値を下げると同時に、エネルギーを脂肪として身体にためる役割ももっています。

朝食を抜くと空腹時間が長くなり、血糖値が急上昇しやすくなります。するとインスリンが大量に分泌され、脂肪がたまりやすくなるのです。

たとえば、朝食を抜いて昼にどか食いした場合、血糖値が急激に上がり、それに反応してインスリンが大量に分泌されます。これが毎日続くと、脂肪をためやすい体質になってしまうのです。

朝ごはんをしっかり食べることは、脂肪をためない身体づくりの第一歩なんですね。

リバウンドしやすい理由とは?

糖質を極端に減らすと、一時的に体重は減ります。

これがリバウンドの正体です。

ある研究でも、糖質制限をしていた人は、制限をやめたあと短期間で体重が戻りやすかったと報告されています。

さらに、糖質を避けたストレスで暴食につながるケースも少なくありません。

ダイエットは我慢ではなく、続けられることが大切です。

糖質制限のデメリット2:睡眠の質が下がる理由

「最近よく眠れない…」そんな悩みが、実は糖質制限によって引き起こされているかもしれません。

睡眠の質と食事には深い関係があり、糖質を減らしすぎることで自律神経が乱れたり、疲れが取れにくくなったりします。

この章では、その理由と仕組みを詳しく解説します。

自律神経と糖質の深い関係

自律神経とは、心拍・体温・消化・睡眠など、身体のさまざまな機能を調整している神経のこと。

糖質をとると、脳からセロトニンというリラックスホルモンが分泌されます。またそのうちの一部は、夜にはメラトニンという睡眠ホルモンに変化するんです。

ところが、糖質を極端に制限すると、セロトニンの材料が不足し、メラトニンも作られにくくなります。結果として、入眠しにくくなったり、眠りが浅くなったりするんですね。

「寝つきが悪い」「夜中に目が覚める」という人は、糖質不足が原因かもしれませんよ。

寝ても疲れが取れない人は要注意

なぜなら寝ている間も、人は生命維持のためエネルギーを消費しているからです。

糖質が少ないと、身体は筋肉や脂肪を分解してエネルギーをつくろうとします。すると、睡眠中も交感神経(活動モード)が優位になり、身体が休まらないのです。

たとえば、睡眠時間が7時間とれていても「なんとなくだるい」「朝から頭がぼーっとする」と感じる人は、夜の糖質不足が原因かもしれません。

糖質制限のデメリット3:集中力・記憶力の低下

「なんだか最近、集中できない」「物忘れが多くなった気がする」その不調は、もしかすると糖質不足が原因かもしれません。

この章では、糖質と脳の深い関係、そして日常生活への影響について解説します。

脳が必要とする唯一の燃料

つまり、糖質が足りないと、脳はエネルギー切れを起こしてしまうのです。

特に成長期の子どもや、集中力が求められる社会人にとっては重要な栄養素といえます。

分かりやすく例えると、糖質制限をすると脳がガス欠状態になってしまうんですね。

仕事や勉強への影響も大きい

たとえば、ダイエット中に「なんとなくぼーっとする」「集中力が続かない」と感じたことはありませんか?それは脳にエネルギーが足りず、働きが落ちている証拠です。

また、注意力が落ちることで、交通事故や仕事中のミスのリスクも高まります。

このように糖質を抜きすぎることで、日常生活に支障が出てしまうことがあるため注意が必要です。

糖質制限のデメリット4:筋肉量の減少と基礎代謝の低下

「体重は減ったのに、なんだか身体がたるんできた…」

筋肉が減ると基礎代謝も落ちて、かえって太りやすい体質になってしまうんです。

この章では、その悪循環のメカニズムをわかりやすく解説します。

なぜ筋肉が分解されてしまうのか

人の身体は、活動するために糖をエネルギー源として使います。糖はグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に貯えられていますが、糖質を制限すると、そのグリコーゲンがすぐになくなってしまいます。

そこで、身体は次の手段として、糖新生(とうしんせい)というしくみを使います。これは、糖の代わりに筋肉のたんぱく質を材料にして糖を作り出す方法です。

つまり、糖が足りないと筋肉を削ってでもエネルギーを確保しようとするわけです。

痩せにくい身体になる悪循環

筋肉が減ると、私たちの身体は痩せにくくなります。

なぜなら、筋肉は基礎代謝の大部分を担っているからです。

基礎代謝とは、呼吸や体温調節などで使われる、何もしなくても消費されるエネルギーのこと。筋肉量が減ると、このエネルギー消費も少なくなり、同じ食事をしていても太りやすくなるのです。

さらに、極端な糖質制限などで栄養が偏ると、筋肉の分解が進んだり、体調不良や免疫力の低下を招くリスクもあります。

短期間で体重が減っても、それが筋肉によるものであれば、結果的に太りやすい体質に逆戻りしてしまうという悪循環に。

つまり、痩せたいからといって筋肉を減らすのは本末転倒。健康的に痩せるためには、筋肉を守りながら代謝を高めることが何より大切です。

本当に正しいダイエットとは?糖質との上手な付き合い方

「糖質はダイエットの敵」そんなイメージを持っていませんか?

でも本当に大切なのは、糖質をゼロにすることではなく、うまく付き合うことです。

この章では、身体に負担をかけずに続けられるダイエットと、筋肉や代謝を守る食事法のコツを紹介します。

糖質を適量摂る「ゆるやかな制限」のすすめ

白ごはんやパンばかり食べるのではなく、玄米や全粒粉パンなどの血糖値が上がりにくい糖質(低GI食品)を選ぶことで、エネルギーを安定して補給できます。

たとえば以下のように、1日を通してちょうどよい糖質を摂ることがポイントです。

  • 朝:おにぎり1個と味噌汁
  • 昼:玄米ごはんと野菜たっぷりの定食
  • 夜:少なめのごはんとタンパク質中心の食事

ゼロではなく適量こそが、健康的なダイエットの近道なんです。

筋肉と代謝を守る食事法のヒント

筋肉を守りながら健康的に痩せるには、たんぱく質と糖質のバランスがカギになります。

くり返しになりますが、糖質が不足すると身体は筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとするため、適度な糖質の摂取が必要不可欠です。

食事のリズムも大切です。1日3食をきちんと食べることで、体内時計が整い、代謝が安定します。
特に朝食では、糖質とたんぱく質をバランスよくとると、その日1日の代謝がスムーズにスタートできるでしょう。

たとえば、以下のようなメニューが理想的です。

  • 朝:卵+納豆+玄米ごはん
  • 昼:鶏むね肉と野菜炒め
  • 夜:焼き魚と味噌汁

無理な制限をせず、食べながら痩せる方法こそ、リバウンドしにくく、続けやすいダイエットといえます。

まとめ:糖質制限のデメリットと賢い健康管理

糖質制限は一時的に体重が落ちることもありますが、筋肉の分解や代謝の低下、体調不良を招くリスクがあります。

無理な制限を続けると、疲れやすさや集中力の低下、リバウンドにつながることも。

健康的に痩せるには、「糖質=悪」と決めつけず、朝・昼はしっかり、夜は控えめにするなど、摂り方を工夫することが大切です。

厚生労働省も「生活習慣を見直しながら、無理のない体重管理を」と推奨しています。

大切なのは、続けられる食習慣。糖質を味方にしながら、リバウンドしにくい身体をめざしましょう。

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